バビロン2巻部分について

バビロン、レビュー等で「社会派」とかの言葉を使うのはやっぱり良くないんだろうな。いや、敵側が社会に介入していく話なんで社会派と言っても間違いではないんだろうけども、日本で社会派というともっと社会の問題を明らかにするとか何かの是非を問うみたいな肩肘張ったものの印象強いからね。
 
やはりポリティカル・サスペンスとかの方が良いと思うんだよな。公式は小説もアニメーションも社会派って言葉は使ってないんだけど、はっきりポリティカルサスペンスとかの言葉使ったほうがよかったとおもう。
 
いや、アニメ勢は今から覚悟しとけよという思いも込めて3巻はアレだと繰り返し言うけど。二巻はねえ、ポリティカルサスペンスとして俺は大好きなんだよ。アニメの方は曲世愛に注力してて斎開化側の方は結構カットされてるからアレなんだが、2巻の面白みは斎開化のやり口によるところがかなりある
 
2巻の時点で自殺法をぶち上げているにわけだが、これは本来ならあまり問題にならないわけだよ、普通なら無視されて終わるから。あまり社会生活とかにつながりのないワンイシュー政党とかに近いものなんだこれは、そしてワンイシュー政党って本来弱い政党なわけだよ
普通は普段議題にも争点にもならない物を支持するための受け皿なわけで、「他の事はどうでも良い、これを支持する層の存在を知らしめよう」って奴しか投票しないから。
 
だけどバビロンは初手で「立候補するものは自殺法への賛否を明言せよ」で本来争点にならないものを無理やり一番の争点にしてしまう。もうこの時点で存在が本来よりも膨れ上がっているわけだ。
そして世論を作るために討論会をぶち上げる斎とそれを利用して叩き潰そうとする野丸、その討論会は投票の前日、子供を盾に世論を作ろうとする野丸、その子供を逆手にとって世論形成で勝利をもぎ取る斎、「子供」に支配される討論。世論形成の場で子供だけがキーになっちゃうあたり、捻くれものの俺としては「社会派~」って思っちゃうんだけどねw
 
もちろん実際の政治はそこまで単純じゃないわけだけど、政治家や役人はなんだかんだ良くも悪くも賢いんだと思うんだけど。世論って言うほどはそんなに賢くないわけだよね、つまるところ俺と同程度の人たちの集合なわけだ、世論って、もちろん立場は違うにせよ行動原理がそんなに変わるとも思えない。
俺と同程度に自己中心的な人たちが己の欲望となけなしの社会性の狭間で出す答えの集合体が世論、そんなもんが賢いわけがない。そして斎は間接民主制が持つ安全弁を念入りに破壊した上で、「世論」がダイレクトに影響する舞台を作り上げた上で本来メインに議題にならないはずの物でハックしてしまう。
 
なんか作者は社会を知らんとか言っちゃってる人居るんだけど、こういう手続きを踏んだ上でやってるあたり本来ならありえない事だってのは重々承知しているはずだし、こういうプロセスをかけてるって事はそれなりの知見があるんだと思うんだよな。
「社会を描く作品にあるべき知性がない、『ジョーカー』などと比べるべくもない」って言ってる人居たけど、ジョーカーと同じ知性はあるよ。ただ映画ジョーカーじゃなくてダークナイト冒頭でピタゴラ銀行強盗やらかしてるジョーカーと同じ種類の知性だけど。
というかある意味映画ジョーカーと同じものを書いてる気もするけどな、ジョーカーの方は本来支持されないものが支持されるのを描き、バビロンは本来支持されない自殺法を支持させるプロセスを描く。
まあ、ジョーカーはそれがおきてしまう状況そのものを描き、間接的に今の世界そのものを描いてるのに対し、バビロンは人為的に状況を作る過程を書くという違いはあるけど。
 
 
以上、他の場所に書いた奴の転載
 アニメだとカットされてるけど選挙の結果は棄権が確か1人で賛成派と反対派が同数になってる
 
 

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一応これも貼っておこう